野山に息づく生命力、蓬の恵み
野山に息づく生命力、蓬の恵み 1. 春の訪れを告げる、生命力あふれる草木 蓬(よもぎ)は、 学名[Artemisia princeps Pampan. ]、 キク科ヨモギ属に分類される多年草植物です。 日本全国の野原や路傍、 山間部など、 いたるところでその姿を見ることができます。 草丈は50~120cmほどに達し、 茎は直立もしくは斜めに伸び、 先端には枝分かれした花序を形成します。 葉は互生し、 羽状に深裂けしており、 独特の強い香りを放ちます。 春になると、 鮮やかな黄緑色の若芽が萌え出し、 初夏には目立たない小花を密集させて頭花を咲かせます。 秋には枯れ色に染まり、 冬には地上部は枯れてしまいますが、 地下茎で越冬し、 翌春には再び力強く芽吹きます。 2. 古代から人々に親しまれてきた、多彩な利用法 蓬は古くから人々の暮らしに深く根付き、 食料、 薬草、 祭祀など、 様々な用途に活用されてきました。 食料 春の若芽は、 独特の香りと苦味を持つ山菜として、 おひたし、 天ぷら、 餅などに加工されます。 乾燥させた葉は、 蓬餅や草餅の原料として用いられます。 沖縄では「フーチバー」と呼ばれ、 ゴーヤーチャンプルーなどの料理に欠かせない食材として親しまれています。 薬草 乾燥させた葉は「艾葉(がいよう)」と呼ばれ、 煎じて飲んだり、 お灸のモグサとして利用されます。 胃腸薬、 冷え性改善薬、 婦人薬など、 様々な漢方薬の原料として用いられます。 殺菌作用や抗炎症作用があり、 民間療法では傷薬や湿布薬として利用されます。 祭祀 端午の節句には、 蓬の葉で菖蒲と一緒にお風呂に入れたり、 軒先に飾ったりして、 邪気を払うとされています。 お盆には、 先祖の霊を迎えるために、 蓬の葉で作 った供物やお供えを準備することがあります。 3. 体を温め、巡りを整える、蓬の効能 蓬は、 豊富な栄養素と薬効成分を含み、 様々な健康効果をもたらします。 体を温める : 蓬には、 血行を促進し、 体を温める効果があります。 冷え性や低体温、 しもやけなどの予防改善に役立ちます。 巡りを整える : 蓬には、 胃腸の働きを促進し、 便秘や下痢を改善する効果があります。 また、 月経痛や生理不順などの婦人科系の悩みにも効果が期待できます。 デトックス : 蓬には、 利尿作用があり、 体内に溜