コルチゾールホルモンと脂肪蓄積の関係:生化学的視点からの詳細解説
コルチゾールホルモンと脂肪蓄積の関係:生化学的視点からの詳細解説
コルチゾールは、ストレス状況下で分泌されるホルモンとしてよく知られていますが、その働きは非常に多岐にわたります。特に、脂肪代謝への影響は、肥満やメタボリックシンドロームなど、現代社会における重要な健康問題との関連で注目されています。
コルチゾールの脂肪代謝への影響
コルチゾールが脂肪代謝に及ぼす影響は、急性ストレスと慢性ストレスで異なる側面を持っています。
急性ストレス下でのコルチゾールの働き
- 脂肪分解の促進: コルチゾールは、脂肪細胞に作用し、トリグリセリドを脂肪酸とグリセロールに分解するリパーゼを活性化します。これにより、エネルギーが必要な状況下で、脂肪から迅速にエネルギーを供給できるようにします。
- 糖新生促進: コルチゾールは、肝臓での糖新生を促進します。これは、血糖値が低下した際に、アミノ酸やグリセロールからグルコースを合成し、血糖値を維持する働きです。
慢性ストレス下でのコルチゾールの働き
- 内臓脂肪の蓄積促進: 慢性的なコルチゾールの分泌は、内臓脂肪の蓄積を促進します。これは、コルチゾールがインスリン抵抗性を高め、脂肪細胞のインスリン受容体の数を減らすためと考えられています。その結果、脂肪細胞はグルコースをうまく取り込めなくなり、代わりに脂肪として蓄積されてしまいます。
- 脂肪合成の促進: コルチゾールは、肝臓での脂肪合成を促進する働きもあります。
- 食欲増進: コルチゾールは、食欲中枢を刺激し、食欲を増進させる働きがあります。
コルチゾールが脂肪蓄積を促進するメカニズム
コルチゾールの脂肪蓄積を促進するメカニズムは、非常に複雑で、以下の要因が考えられています。
- インスリン抵抗性の増大: コルチゾールは、インスリンシグナル伝達を阻害し、インスリン抵抗性を高めます。これにより、グルコースの取り込みが阻害され、脂肪合成が促進されます。
- 視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)の活性化: 慢性的なストレスは、HPA軸を活性化し、コルチゾールの分泌を慢性的に高めます。
- 炎症反応の促進: コルチゾールは、炎症反応を促進する作用も持っています。慢性的な炎症は、インスリン抵抗性や脂肪蓄積を悪化させることが知られています。
まとめ
コルチゾールは、急性ストレス時にはエネルギー供給のために脂肪分解を促進しますが、慢性的なストレス下では、内臓脂肪の蓄積を促進し、肥満やメタボリックシンドロームのリスクを高めることが明らかになっています。
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